早朝、仕事に向かう途中で妹の陣痛を知らせるメールが入る。冗談半分にえびす講の花火の音で出てくるんじゃない、と甥の時と同じことを皆が並べていたら正にまたそうなった。ただ、昼間は一向に音沙汰無く、メールを待ちわびて夕方になり、これ以上は我慢ならない、と携帯を手にした瞬間、午前中に生まれたよ、と母からメールが入った。電話をすると、電話の向こう側で、分かっているのか分かっていないのか、いつも以上にハイテンションの甥が騒いでいて、電話を切る時には、じゃあね、じゃあね、と連呼してくれた。まぁ、嬉しいだろう、女の子だし、妹だし。次、長野へ帰った時には新しい顔が増えている。初めまして。

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回送電車

朝の眠さや暑さや寒さや呪いの中、わざわざ高架橋を通ってまで避ける駅に隣接した踏切を、坂登りの億劫さから帰りは毎回通る。で、大抵はそこで引き止められる。2〜3分で開けばかなり良い方で、ダイヤが乱れていたりすると、10分でも15分でも開くのを待つ。その時の電車は乗客の顔をばっちりと確認出来るくらいにゆっくり進んで、まぁドアの前に立っている人と目が合ったりもする。あちら側から見たら、物欲しそうな顔でもしているのかもしれないな、と思いながら過ぎるのを待っていると、次に逆方向の電車が訪れ、そうしているとまた逆方向から今度は駅に電車が止まり、踏切は開かない。その電車が過ぎてやっと開くだろう、と思った次は大抵、回送電車が通る。人を乗せていない電車は待っているこちら側からすれば不必要極まりない。そんな憎しみに似た視線は、でもぶつかる所もなく、照明の落ちた車内を通って、対岸へと突き抜ける。対岸からもこちらに降り注ぐ。そんな中を、乗客のいる電車と変わらない速度で、回送電車はゆっくりと走り抜けていく。
と、開かずの踏切で考えていたら、ふと堀江敏幸の著書であったな、と思い出した。

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マナーモード

いつもより1時間も早く目が覚めて、よしとばかりに二度寝をしたら出勤時間を少し過ぎてから再び目が覚める。ずっと、目覚まし時計と使っていない携帯で問題無かったのだが、確認してみると、目覚ましは電池が終わっていて、携帯は何故かマナーモードに。使っている方の携帯にはいつもの起床時間頃にメールが届いていたのだが、そちらもマナーモード。自転車通勤だから殆どマナーモードにすることもないし、ましてや目覚ましとして使っている携帯はアラームセット時以外には触りもしないのに。働き詰めの毎日で、気持ちでは分からないでもないものの、これで二度目の遅刻。
書き留めることを後回しにしていると、いつの間にか呪いの言葉に覆われて、思ったことを覚えていても、何を思ったのかを忘れてしまう。

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霜月

本当に寒いよ、と何度も念を押されていたから、昼間の東京には流石に暑いな、という格好で帰ったのだが、長野に降り立つとすぐに震えが始まった。車窓から見える風景に秋もそろそろ終わりか、と思っていたが、もう冬に入っている。方々で志賀高原では既に初雪があったと聞く。
密かな企みを持って荷の底に詰めたビデオカメラは、結局5分程しか回さなかった。1年以上触っていないし、持ち歩いてもいなかったから、持ち帰ったことも殆ど忘れていた。帰宅直前の午後に思い出し、信濃美術館へ行った帰りにそのまま屋代の田園地帯まで足を伸ばして狼煙を探すが気に入ったものが上がらなかった。ふらふらとしているうつに森将軍塚古墳を真似て作ったというにしては小さな展望台のある公園に辿り着き、仕方なしと操作を思い出す程度に暫く回した。後は断片。不満の残る形で東京へ戻り、テープを再生してみると、でも、そこには自分の映像が映っている。写真よりも映像に自身が映っている。だから、こんなんじゃあ金にならない、と思う反面、これで良いじゃん、と思ってしまう。

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